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青山OL期間が ~6月30日 になりました
2026/06
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わたしは緑間の存在を忘れがち
















***************************************************



【くろいろバンパイア】

「テツくん!」
「おはようございます、青峰くん、桃井さん」

このひとたちが誰か知ってる
同じ部活のひと
このひとたちは幼なじみ
僕と彼らはトモダチかシリアイ
その境界も色の差も知ってる
朝、青色は嫉妬の青

「…はよ」

でも今日は色の薄い方
桃色に先に挨拶したり、手を触れたりすると、口もきいてもらえない
青色は嫉妬の青

「ね、テツくん宿題した?私数学分からなくて」
「僕も全然」
「あっでもやったんだ?あとで答え合わせしようよー」
「構いませんけど」

ちらりと盗み見ると
それより早く目を逸らされる
やっぱり嫉妬

桃色は想いが強すぎる
誰にでも
いつだって
ほかの色が受け止められないくらいに

誰よりも誰もを好いて誰からも好かれたがって気もそぞろな浮かれた桃色

「青峰くんも勉強しようよ」
「…いやに決まってんだろ」
「青峰くん」
「っせえよ」

桃色がそんなだから
ほらまた青色が嫉妬に染まって手がつけられない目の色

「マジだりぃ」

そのくせすべて包んで丸めて飲み込んで桃色の天下

「もう、そんなこと言ってる人にはお弁当渡してあげないんだから!」
「っち、めんどくせー」
「するんですか、勉強?」
「ちょいちょいやっとかねーとさつきがうるせェんだよ」
「そうですか」
「ちょっ、青峰くん!そんなことないからねテツくん!」

青と桃は混ぜ合わせると綺麗な薄紫
どうしてこんなに綺麗なのか

それに引き替え、黒はなにと混じっても黒
真っ黒すぎて、見たい色も意味も、見えない



【きいろハニージンジャー】




【あおいろブルーハワイ】
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【大人になりたくなかった】



ケイはある日大人になった
それまで子どものルールが適用されていたが
これからは大人のルールで生きていかなければならない
市の係員が大人の街を案内しながらルールを教えるツアーがあるという
ケイはそのツアーに申し込んだ


「ようこそ、大人になりたての皆さん」

市の係員はよれよれのスーツを着て、暗い顔で静かに呟いた
ケイは、身だしなみを整えて、あいさつは元気よく、と習っていたので驚いた

早速質問する
どうしてよれよれのスーツを着ているのですか?
市の係員は怪訝な顔で答える
「どうしてって、私は独り身だからですよ。奥さんがいないとそういうことまで手が回らない」

どうして元気よくあいさつしないのですか?
「どうしてって、元気よくあいさつしたらうるさいじゃないですか。当たり障りなく、これが一番ですよ」


市の係員はケイの職場を案内してくれた
たくさんの人たちが働いているが、みんな仲が悪そうだ
お昼ご飯はそれぞれパソコンに向かったままコンビニのおにぎりを食べている

ケイは不思議に思って質問した
なぜみんな仲が悪そうなのですか?
「なぜって、みんなライバルだからですよ。蹴落とすか、蹴落とされるかの世界なので、みんな仲が悪いのです」

仲が悪くても仕事になるのですか?
「もちろんです。つまらない人材を蹴落とすことで素晴らしい1人の人材が育成されます。協力などは必要ありません」


移動の途中に喧嘩している人たちを見た
「あれは新法に反対する市民が座り込んで動かないので、警察が連中を追い払っているんですよ」
たくさんの人たちが殴ったり、殴られたりしている
地面に倒れて動かない人もいる

ケイは質問した
なぜ仲良くできないのですか?
「なぜって、利害が衝突するからです。みんな自分の言い分を通したいのですよ」

なぜあなたは喧嘩を止めないのですか?
「なぜって、怪我をしたら嫌だからですよ。私には関係ありませんし。さあ、行きますよ」


市の係員は別れ際にこう言った
「あなたも市への就職を考えると良いですよ。安定した仕事で、土日は絶対に休めます。給料もそこそこ多いし、現代社会の中では勝ち組です」

ケイは、そうですか、とだけ返した
内心、叫んでいた

「大人になりたくなかった」




【どこかへ行く魔法】



森の中に家があり
家の中に魔女がいた
魔女は森に迷い込んだ人にひとつの魔法をかける

どこかへ行く魔法

ある人は行きたい場所へ
ある人は考えたこともない場所へ
魔女の魔法で行く

人々は恐怖をもって魔女を避け
人々は希望をもって魔女を訪ねた

ある日魔女をひとりの青年が訪ねた
「もうどこへも行く気も帰る気もしないんだ、だからここではないどこかへ」

魔女は青年に魔法をかけた
魔法は魔女の永遠の命と魔女の魔法と森の外に出られない制約を青年に与えた
魔法を失った魔女は死んでしまった
死の間際に魔女は言った

「いずれ希望がおまえを救う」

青年は魔女になった
かつての魔女がそうであったように、訪れる人に魔法をかけた
夢を追いかけてどこかへ行く人
憎しみに突き動かされてどこかへ行く人
郷愁に強く呼ばれてどこかへ行く人

青年はその全てが魔女がかつて予言した希望であると気がつく
青年―――いまやかつての魔女そのものである―――は希望とともに旅人たちを送り出した



ある日魔女をひとりの少女が訪ねた
「もうどこへも行きたくないし、帰る場所もないの、だからここではないどこかへ」

魔女は少女に魔法をかけた
魔法は魔女の永遠の命と魔女の魔法と森の外に出られない制約を少女に与えた

魔法を失った魔女は青年に戻った
青年は自分が死にゆく身であると気がついた
そして掴めない希望を力の入らない手でしっかり握りしめた

不安げな顔の少女に何か言いたかったが唇がほとんど動かなかった
青年はできる限りの優しい顔を作って、吐き出した

「いつか希望がきみを救う」
陽一は考える。何故自分はここにいるのか。
薄手の、閉めかけのカーテンの隙間から赤い光が射し込んでいる。夕焼けだ。少し眩しい。手をかざしはしないが、窓に背を向ける。そうすると勉強机と目が合った。綺麗に片付いている。いつもなら漫画や教科書が開かれたままの状態で放置されているのに。いつ片付けたか。そもそも、何故片づいているのか。部屋の主は陽一であるはずなのに、居心地が悪い。不自然極まりない。シャープペンシルが一本残らずペン立てに仕舞われている。教科書とノートと問題集が科目別に仕舞われている。不自然極まりない。
否、部屋が片付いていることなど問題ではない。先ほど自分は何を考えていたのか?「何故自分はここにいるのか」?ここは陽一の部屋である。部屋にいて良いはず、間違いはず。それに対して疑問を抱く意味は何か。
夕焼けはより赤さを増して強く射す。陽一の背中を強く射る。勉強机も真っ赤に染まる。端から端まで余す所なく真っ赤だ。教科書もペン立ても真っ赤。ペン立ての後ろに少しだけ黒く、影。
そうだ自殺したのだ、と思い至るのに少しばかり時間がかかった。陽一の影がない。机の上は真っ赤だ。そこに陽一は存在していない。片付けられたら部屋の違和感など詮の無いことだ。この部屋を陽一が見ているのに陽一はこの部屋にいない。それが問題だ。

「すみません、声をかけてもよろしいですか?」

頓珍漢な言葉に振り返ると黒い色に身をつつんだ男がいた。黒スーツだ。赤い陽に微動だにしない。
陽一にはすぐに分かった。この黒スーツは陽一を連れに来たのだ。

「俺、罰せられる?」
「あなたがそう望むのであれば」

黒スーツが陽一に手を伸ばす。陽一はその手に自身の手を重ねた。陽一は黒スーツに触れたときようやく自分に体温がないことに気がついた。

「あなたの心はどこにありますか?」
「こころ…」
「あなたの心を返さなければならない」
「どこに、」

そこで一旦陽一の意識は途絶える。




※龍は自分の空間を自由にいじれるが他人の属性をいじることはできない
※龍にも得て不得手がある。それは色毎に異なる。
黒はものを壊す
赤はものを想う
緑はものを作る
白はものを動かす
金はものを従える
青はものと関わらず自由である
※白閃龍
※慶黒龍(くろ)
※叡黒龍(先代)
※龍の名前に龍ってつけて呼ぶのは尊敬の念というか…龍は役職名みたいな



人間とは面倒だな、と声がする。幼い女の子供の声だ。口調にそぐわない高い声。
「コウちゃん?」
「名乗らねば分からんか?」
「いや、そうだね、分かる」
ふん、と鼻を鳴らす音が聞こえた。いつのまにか、幼い紅の巻き髪の子供が腕を組んで立っている。その場所が華紅龍の作った空間であることに遅れて気がつく。空が紅く、大地は黄金色だ。派手好きな華紅龍らしい、派手で暖かくて優しい空間である。風すらも暖かく優しく吹き、みどりの緑がかった金の髪に少々の悪戯をして過ぎていく。
「つい、なぜこんなことにと考えてしまうのだよ」
華紅龍が手を降ると幾何学的な模様が描かれた敷物と細かな柄の入った茶器と2人では食べきれないほどの茶菓子が現れた。ご丁寧に、黒のスーツに身を包んだ男2人も現れる。ひとりは華紅龍の足元に跪いてブーツを脱がせ、ひとりは茶の準備をしている。みどりは敷物にどかりと座った。顔をしかめて華紅龍がブーツを消してくれることを見越しての行動である。
「おまえは風情がない」
「人間は面倒くさいとか言ってなかった?」
「愚か者め。風情がなければ退屈だ。龍に文化はないし、今から作るのはどうしようもなき面倒だ。何より龍に正体はないのだから人間のカッコして人間のように振る舞って何が悪い。それから、」
「まだあるの、」
「これで最後だ。先に私が言ったのは人間と関わると面倒くさいと言ったのだ。誤るな」
靴を脱がせてもらった華紅龍が敷物の上にようやき座った。靴を脱がせていた方の黒スーツは手を拭いて茶菓子の取り分けを始める。茶の準備をしていた黒スーツは先に華紅龍に、次にみどりにティーカップをソーサーごと手渡した。おお忘れていた、とみどりが言うと華奢な細工を施された小さなテーブルが現れる。それから、色とりどりのクッションの山。みどりはクッションをひとつ尻の下に置き、華紅龍はたくさんのクッションに埋もれるように座った。
黒スーツに手渡された茶は甘い匂いがする。なにか、花びらのようなものも浮いている。
「ジャスミンだよ。わたしが育てた」
「育てるの?出すんじゃなくて?」
「ただ現出させるにも最高の味を知らねば再現することはできん」
「龍も大変だよねぇ」
「そのための長命さ」


(中略)


「僕が人間の形をしていることが答えなんじゃないかな?」



くろばすの紫と氷。

ていうか紫原くんktkr。
お菓子あげたいー。なでたいー。いいこいいこしたいー。
あんな可愛い長身いたら隣におきたいよね。多少ばかでもいいよね。ね。










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【Please Don't Leave Me Alone】



「敦はかみのけに触るのが好きだね」
「そうかな?…そうかも」

危ないから座って待ってて、と言って聞く紫原ではない。
氷室は豆のスープを煮ている。
紫原は料理をする氷室の髪に頬を擦り付けている。
最早氷室も慣れているため、危ないからと口煩く言うこともない。

「ざらざらする。長い猫の毛みたい」
「それは髪が荒れてるって言いたいのかな?」

氷室はかわいらしい女の子ではないから、髪の手入れなどしない。
シャンプーとリンスが浴室にあって、惰性で毎日使っている。

「荒れてる?」
「枝毛とか?」
「そういうのはないと思う。もっとよく見て探したほうがいい?」
「いや、いいよ。ありがとう敦」

鍋をかきまわす手は止めない。
ただ、今にもごろごろと喉を鳴らしそうな紫原が可笑しくなって氷室はくすくすと笑った。

「髪、」
「ん、」
「さらさらヘアを目指してみようかな。敦が好きなら」
「ん…」

紫原は頬をすりつけていた氷室の髪に、今度は鼻先をつっこんで口付けた。
氷室の髪と頭に口づける。
しばらくそうしていてから、紫原はうんと頷いた。

「俺は室ちんならなんでもいい」

その言葉に氷室は目を丸くした。
鍋をかきまぜる手が止まる。
首をぐるりと回して紫原を見る。
紫原は氷室を覗き込むように顔を離した。

「敦、それは口説き文句だよ」
「そうなの?でも、俺、室ちんのこと好きだから間違ってないよね」
「間違ってはいないけど、」

(他の人にぽろっと言いそうでちょっと嫌だな、)

「室ちん、何か考えてる?」
「いや、なんにも。できたよ。ご飯にしよう」

氷室はおたまを置いて紫原を押し離すように紫の髪に触れた。

「室ちん、もっと触ってよ」
「ご飯食べたらね」

氷室は最早どう答えればよいか分からず、笑った。

くろばすの紫と氷。

正直あんま憶えてないのに書くのどうかなーと思ったけど
なにかが降りてきたのでかきました。








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【焼ける空と同じ色の愛情】

 

旅行に行こうと言い出したのはどちらだったか。
紫原も氷室も記憶していない。記憶していないが、
それは出会って間もない頃のことだったように思う。
初めてキスをしたのもそのときだ。

知らない街の誰もいない公園で、屋台で買ったまんじゅうを頬張っていた。
ブランコに揺られながら、紫原の膝の上には1つだけ残ったまんじゅう。
夕日がまぶしい。

「最後のいっこ、食べていい?」
「いいよ。美味しかった?」

氷室の質問には答えずに紫原はまんじゅうを頬張った。
さして大きくもないまんじゅうは紫原のふたくちでこの世から消える。
その僅かな間に、あんこと皮がぼろぼろ落ちて紫原の膝の上に落ちた。
気にした様子もなく紫原は膝の上から食べかすを払いのける。
そのしぐさを見て氷室は失笑した。

「ついてる」
「ん」

氷室は腕を伸ばして紫原の口元についたあんこを拭ってやった。
僅かに逡巡して氷室はそのカケラを口の中にいれる。
甘い。
遥か海の向こう、米国ではあまり口にしなかった類の甘さである。
自分の口の端の甘味を拭って食べた氷室を、今度は紫原がしげしげと眺めた。

「室ちんはおかあさんみたいだね」
「そう?」
「うん、俺のおかあさんはそんなことしないけど」
「じゃあお母さんじゃないんじゃないかな?」
「そうかな?」
「そうだよ」

じゃあ何かな、と紫原は呟いた。
紫原が何を言わんとしているか、それこそ氷室のほうが知りたいことである。
くすくすと笑って氷室は小首を傾げた。女の子のように。

「恋人みたい?」

紫原はすこし考えた。
氷室は、すこし間違えたかな、と思った。

しかし紫原は、

「うん、そんな感じ」

と答えた。

その答えに氷室は戸惑う。
先ほど紫原の口許についていたあんこは指で拭うより舐め取れば良かった、と思う。
氷室の左手が何の前触れもなく紫原の左腕に伸びて、手の甲が触れた。
紫原は動じず、払いのけもせず、氷室の目を高い位置からのぞきこんでいる。
氷室はその視線に怖気を感じつつ言葉を零した。

「キスしたいって気持ちとキスされたいって気持ちは同じなんだ。…知ってた?」
「知らない」

紫原は氷室の髪に指を差し込んだ。
手入れのされていない髪は毛先がやや痛んでいて、
しかし紫原の指を引き止めることはなかった。
さらりと髪を梳いて指が落ちる。

「敦が教えてよ」
「いいよ。目、閉じて」
「閉じたら分からないよ」
「そういうものなんだけど…まあいいか」

氷室は紫原に口付けた。目を開けたまま、
近すぎる距離で居た堪れないくらいに見つめあいながら。
しばらく唇を吸った後に離れると、今度は紫原から口づけてきた。
口付けと言うにはあまりにおこがましいかも知れない。
噛み付くように口付けて、無理やりに舌が入り込んでくる。
物覚えが良いのか、慣れているのか。
あるいは氷室が受け入れなれているのか。

目を閉じる気配のない紫原の高い位置にある肩にすがって、氷室は目を閉じた。
 


桃青桃小話メモ:
①お弁当、箸忘れる、じゃんけん、おにぎり 
②春先、屋上、昼寝、くしゃみ 
③ボールがぶっとんで非常灯クラッシュ、逃亡、隠れる、空腹




【①学校の屋上的非日常、自宅の居間的日常】

 

「あ」
「ん?」
「箸、入れ忘れた」
「バカかよ」
「…。別にバカにしてもいいけど、昼飯食べられないぞ、このままじゃ」

学校の屋上の給水塔。の、影の部分。
スポーツタオルを3枚詰めた鞄を枕に青峰は寝ていた。
桃井は母と作った2人分の弁当を手にしていた。

5月とはいえ日差しが暑い。
元々肌が黒くて暑さに強そうに見える青峰は、実際のところ暑さを極端に厭う。
夏の屋外でのバスケはするくせに、太陽の日差しの下でじっとしているのが耐えられないのだそうだ。
桃井はそれを見ながら、どんなときだってじっとしてるのは苦手だろうに、と思うが、
小理屈をこねられて喜ぶ男ではないとよく知っている。
桃井自身もそんな青峰の矛盾をつつこうとは思わない。
気だるげな青峰は見慣れているし、むしろそんな青峰を見ていることが桃井の日常である。

「青峰くん、食堂で箸貰って来てよ」
「なんでオレが」
「じゃあジャンケン」
「ァあ…?」
「じゃーんけーん、ぽん」

ぽん、

と出された色の黒い手はグーで色の白い手はチョキ。
桃井の負けである。

「うっわ、めんどくさ…」
「人に面倒事を押し付けようとしてんじゃねぇよ」
「だって青峰くんのが足速いじゃないか。食堂1階だよ」
「早く行け」
「もー…。手掴みで食べたりとかしないで待っててよ」

た、と桃井は階段に消えた。
桃井の足音が聞こえなくなると、青峰は起き上がって桃井の鞄を開いて弁当を取り出した。
おかずの入ったタッパーとおにぎりが入ったタッパー。
おにぎりには赤や青や緑のシールが貼られている。
まよわず青のおにぎりを取って、食べた。肉味噌おにぎりである。
迷わず青いシールのおにぎりを2つ3つ食べた頃、桃井が帰ってきた。

「あ!先に食べてる!」
「おにぎりだからいいだろ。ラップかかってるし」
「だめだよ!ていうかお手拭入ってるんだから手くらい拭こうよ!ほら、」

桃井は鞄の中からお手拭を出して青峰に渡した。
青峰は何を言うでもなく手を拭く。

箸2膳。
タッパーを挟んで青峰の向かいに座って、桃井は手を合わせた。

「いただきます」
「ん、」
「青峰くん、いただきますは?」
「ます」

青峰はから揚げを、桃井はしょうゆの卵焼きから手をつけた。
黙々と食べる。
日陰に吹き込む、少し乾いた風が心地いい。
野菜も食べなきゃ駄目だよと言いかけて桃井はやめた。
まるで家に2人でいるときのようである。

そういえば家の外で2人で食事を摂るのは久しぶりだ、と桃井も青峰もそれぞれに思った。
いつも喧しい部活の連中の姿がない。

「みんな今日はお弁当ないから食堂行ったよ」
「いつもこれくらい静かならいいんだけどな」
「まあ…あっ肉味噌あと一個しかない!」
「残念だったな。家帰ってから食え」

ひょい、と青峰は青いシールのおにぎりを手に取った。

「あ、あー!最後のいっこ!」
「梅とたらこあるからいいだろ」
「梅とたらこも好きだけどさー…肉味噌…」
「さつき、お茶」
「うん」

恨み言を呟きながらお茶をカップに入れて青峰に渡した。
少し考えてから、桃井は緑のシールのおにぎりを取った。

(今日青峰くんは帰ったら何が食べたいって言うかな)

そんなことを思いながら、桃井自身は肉味噌に思いを馳せていた。

練習。




:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::





【ももいろフラミンゴ】
いつからだろう
苗字で呼ぶようになった
昔は名前で呼んでいた
苗字なんて、知りもしなかった

「青峰くん!おはよう」
「おう」

毎朝一緒に通学することも珍しくなった

「今日メシ食いに行くから」
「うん。メインはハンバーグだって言ってた」
「まじかよ。練習サボりてえー」
「もう、だめだからね!サボったらご飯抜きなんだから!」
「オマエが作るわけでもねーだろ」

夕飯は一緒
週に1回くらい
週に1回の夕飯のときは一緒に帰る
週に1回くらい

いつからだろう
距離が遠くなったのは
遠ざけたのか、遠ざかってしまったのか
少しずつ成長して、コドモじゃなくなって
どこかで間違えた?
いま、間違っている?

「さつき」
「・・・え?」
「なんだよ、なに驚いてんだよ」
「あ、ううん、なんでも。なに、どしたの?」

分からない
それでも名を呼ばれることに恐怖と嬉しさを一緒に感じる
どうしていいかわからないまま

(だいきくん)

「青峰くん」

 

【あおいそら】

もうだいきくんって呼ばない、あおみねくんって呼ぶから

と、宣言されたのは小学校5年か、6年か
あまりよく憶えていないが、とても腹が立ったのは覚えている

(なんだよそれ)

「さつき」
「・・・え?」
「なんだよ、なに驚いてんだよ」

腹が立ったのはなぜだったか
いまも、腹が立つのはなぜか
どうしたら、ああそうかよ、と何も考えずに答えられるのか

「あ、ううん、なんでも。なに、どしたの?青峰くん」
「・・・今日の練習試合、勝ったらお前の分のハンバーグよこせよ」
「えっいやだよ!青峰くん絶対勝つじゃん!」
「だって腹減るだろ」
「私だって頭脳労働してるんです!」

なぜ腹が立つのだろう
ただ話しているだけで
喧嘩しているときとは違う
話さなければ、会わなければ、それはそれで腹が立つのに

「おまえなんかいなくても勝てる」

出てきた言葉は、自分でも棘だらけだと分かった
でも引っ込めない
ふん、と鼻を鳴らす音
左肩のあたりで

「知ってるもん、青峰くんが強いのなんて」

その言葉に笑った

昔から
そうだ、昔からのつきあいだ
全部分かっているはずだ
分かっていて欲しい
欲しい言葉もなにもかも、ぜんぶ

「あっテツくん!おはよう!」
「おはようございます、青峰くん、桃井さん」
「・・・はよ」

棘だらけの言葉も腕も心も全部
どうして分かってくれない
 

くろとみどりは夢の中で会う。あるいはくろが作った空間の中かもしれない。とにかく、くろとみどりは世界ではない別の場所で会う。その場所に時間の概念はない。言葉を交わすことも触れることもできる。ただし、みどりが望んでもくろに会うことはできない。くろはみどりに会うことができる。その場所では休息も食事も可能だがくろが望んで現出させなければ何も存在しない白い場所。みどりが望むためくろは植物と白いテーブルとティーセットを最低限用意している。現実世界での疲労等はその世界に持ち越し。その世界での回復や疲労ももとの世界に持ち越し。やっぱくろが無自覚のうちに作った空間だと思う。



みどりは先代の黒い龍が作った命であるため、くろは無意識のうちにもみどりのアレコレを察知することが可能



箱はくろのウロコでできており、くろが管理している。だが、くろが大人になる前に箱を手放すとくろ自身も箱がどこにあるか分からなくなる。こどものくろはくろ自身を世界の中から見つけることができないでいる。
くろが箱を手放した後も、箱が箱として形を保っているのは、箱の中にくろの逆鱗があるため。



みどり
起 新しい命、くろとの出会い、政治家青年との出会い
承 コウとの再会(女学者の話)、盗賊の登場と箱の街の人々の争い
転 みどりの死とくろの覚醒、箱の紛失(青年が持ち去った)
結 くろの死とみどりの復活、女学者との会話



くろ
起 みどりの死、箱の外の世界
承 政治家青年との出会い、箱の行方が分からないこと、青年の街が少しずつ崩壊していること
転 箱と箱の中の人々を発見、箱の中の人々は青年の街を消して箱の街とすげ替えようとしている、そして最終的には箱を消滅させることで完璧な脱出を図ろうとしている(箱がなくなればくろが成体になっても箱の中の人々を追い復讐することはできないと彼らは考えている、彼らはくろに恐怖と後悔と憎悪を抱いている、でも箱の中にあるくろの逆鱗はほしい、不老不死がほしい)
結 くろは街を自分ごと燃やす。くろがウロコで作った箱、その中で成長を続けていた逆鱗とみどりは無事。しかしくろは逆鱗と箱のみを残して燃え尽きてしまったため本能的に時間を巻き戻して成長のし直しを図る。これはくろが成体でなく子を孕んでいなかったため(子がいたら新しい龍が生まれていた)。

※街の人はみどりが箱の中から消えれば箱が消滅して解放されると信じている
※この知識は純白の龍が入れ知恵したもの。純白の龍についてはまた後ほど
※箱が壊れてもくろは死なないが箱の中の逆鱗が割れるとくろは死んでしまう、逆に言うと逆鱗が無事である限りくろは時間を巻き戻して命のやり直しをする
龍の箱



龍の鱗でできた箱の中には龍を殺した人間たちが入っている。箱の中は人間たちが住んでいた街がそのまま入っていて、そこでこの世とは違う時間の流れを生きている。死んだ龍の代わりに生まれた新しい龍は箱の中でゆっくりと育つ。手のひらに収まる大きさの、黒くて、しかし虹色に強く輝く箱。龍が成長して大人になり箱の外に出るときに人々は箱の中から解放される。箱からの解放が自由か死かは分からない。箱の中から解放されたことがないからだ。龍は十分に育つ前に箱の外に出て世界と相対してその身を燃やす。それが何十何百と繰り返されてきた運命。龍が燃え尽きると同時に箱の中の時間が巻き戻される。龍は幾度となく眠り記憶を失う。箱の中の人々もまた記憶を失い希望と野望を得る。箱を守って息絶え、箱の中で眠りにつくものだけが全てを記憶している。箱の守りは龍の支えであり唯一であるがために龍はその身を燃やして守りを蘇らせる。守りが命をかけた龍は守りのために自らを燃やす。守りは幾度でも龍を守る。どうか今度こそ私のことなど気にせずに生きておくれと願いながら龍を守って死んでしまう。死が死を読んで止まらない運命と時間の喜劇か悲劇
か。誰も死ななければ誰もが生きてゆけるのに、何故死んでしまうのだろう?



くろ
世界で唯一の黒い龍。その鱗を摺り潰して飲み込むと不老長寿になり、逆鱗を飲むと永遠を得られる。
欲に狂った街の人間たちが先代の黒い龍を殺したときに新しい龍が生まれた。新しい龍は生まれたその瞬間に世界と自分の空間を断絶した。成長するまで人間たちに殺されないようにするための自己防衛であると思われる。箱の中に人間たちを閉じ込めた理由は不明。復讐か、あるいはただの偶然か。
守りからは「くろ」呼ばれているが、正式な名前は成長したときに自ら得るのが龍の性質。
知識は先代から受け継いだものを徐々に理解していくが、経験はほぼない。好奇心が旺盛だが、先代の知識が好奇心のストッパーとなっている。このため、関心があっても知識に縛られてあまり動けずにいる。ほんとに興味があるものについては不言実行でついてっちゃう。守りを親のように兄のように慕うが、知識に関しては守りよりも多くを知っているため好奇心のままに動く守りを危なっかしいと考えている節がある。
コウちゃんのことはよく分からないと思っている。きっと嫌いではない。



みどり
くろを守るために先代の黒い龍が作り出した命。くろのためなら何を犠牲にしても構わないし、くろが身を焼くことを心苦しく感じる。一方で、くろがみどりのためにその身を燃やすことを幸せと感じてもいる。
くろを守るために幾度となく滅ぶ。悲しみに暮れたくろによりくろの箱の中に格納されて眠りにつき、世界が巻き戻る際にはくろの炎で焼かれなかったために記憶を保持した状態で復活する。
名はその目の色からつけられた。つけたのはくろだが、くろ自身は覚えていない。髪は緑色を含んで透き通った檸檬色。背は高くなく、面立ちは中性的。子供っぽく何にでも興味を持つ面もある。



華紅龍(コウちゃん)
ときには遊び人、ときにはセクシー系お姉さん、果たしてその正体は赤い龍。くろに様々なアドバイスや悪戯をしつつ見守る長寿の龍。人間が好きではなく、くろの箱から人間を追い出してくろを一人前の龍にしたい。
くろの運命の外にあるが、くろの運命にずっと寄り添っている。先代の黒い龍に恩があり、その恩をくろに返すために生きている。
みどりのことはどうでもいいのだが、みどりがくろの守りであり、更にはみどりが先代の黒い龍の残した命であることからちまちまと手助けをする。ただし、真に大切なのは黒い龍であると考えているため、みどりを犠牲にくろを生かすことに抵抗はなく、反対にくろがみどりのために命を落とすことを快く思わない。みどりには恨み半分、愛情半分といったところ。
紅い髪で、巻き髪。男の時も女の時もそこだけは同じ。本人は幼女の姿が一番しっくりくるらしいが、幼女の姿のコウちゃんがくろと一緒に歩くと通報される。



街の人



学者の娘



田舎に逃げた政治家とその妻と子
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