[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
いつものとは全然関係のない小咄
*----------------------------------------------------------------------*
運命を交換した勇者と負け犬
負け犬は勇者になって神様から刃を賜った
勇者は負け犬になって泥水を啜った
勇者は、それでも心は勇者だったので
泥水を啜り残飯を漁っても諦めなかった
それが何かも分からないままやがて来る日に備えた
負け犬は、それでも心は負け犬だったので
神様から賜った刃を屋敷の倉の奥底にしまった
それが何かも分からないままやがて来る日を恐れた
ある日、神様が隠れて天を暗闇が覆った
悪人がはびこる世界になった
勇者は刃毀れだらけの剣で悪人を斬った
負け犬は屋敷の壁を高くして家に篭った
やがて勇者は大きな竜に会う
竜の翼が神様を隠していることを知る
やがて負け犬は勇者を見つける
勇者が世界を救わんと願うことを知る
勇者は負け犬の屋敷に忍び込んで刃を奪って竜を斬った
しかし、勇者と神様に認められたものだけが使うことを許された刃は
竜を斬って神様を救った勇者を血の海に沈めた
負け犬はその一部始終を見ていた
負け犬は勇者の刃を与えられても負け犬のままだった
負け犬が勇者の刃を抜いていたのなら、勇者は死ななかったかも知れぬ
神様が去ぬこともなく、世界は混沌に包まれなかったやも知れぬ
負け犬は勇者の剣を倉の奥底へしまった
なぜなら彼は負け犬だったからだ
愛してるって伝えたら世界が変わるわけもないけれど
せめて愛してるって伝えられれば良かったなあ
って言う後悔みたいなのをいずれしっかりと書きたい
:::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
みどりは目を閉じて思う。
優しい優しい、幼い心の黒い龍。
せめて何か伝えられれば良かったと思う。
何を伝えるべきかは分からないが、それでも何か伝えたかった。
いつもそう思いながら死んでいく。不毛だ。
笑おうとしたが笑えなかった。口許が動かない。
「みどり・・・」
黒い目が見える。
もう自分は何も言えないだろうとみどりは感じているし、知っている。
不安そうなこの目に何か言えればよかったのだが。
黒い夜、くろの向こうに白い月が見えた。
遥か遠くにぽつんと漂っている。
周りには小さな光があるが、月は明らかに異質だ。
月は美しいし、光に囲まれて調和している。だが、光とは異なるものだ。
「みどり、いま、なおす。だから、。だから、しんだらいやだ」
たどたどしい言葉を鼓膜に注がれて切なくなった。
何か、せめて何か、生きろとか愛しているとか言えればよかったのだが、そうもいかない。
意識も揺らいでいる。
そうだ、せめて手を握ってやればよかった、
と、みどりは思ったものの、それは実現されることなかった。
宵闇を龍の悲鳴が切り裂いた。