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桃青桃小話メモ:
①お弁当、箸忘れる、じゃんけん、おにぎり
②春先、屋上、昼寝、くしゃみ
③ボールがぶっとんで非常灯クラッシュ、逃亡、隠れる、空腹
【①学校の屋上的非日常、自宅の居間的日常】
「あ」
「ん?」
「箸、入れ忘れた」
「バカかよ」
「…。別にバカにしてもいいけど、昼飯食べられないぞ、このままじゃ」
学校の屋上の給水塔。の、影の部分。
スポーツタオルを3枚詰めた鞄を枕に青峰は寝ていた。
桃井は母と作った2人分の弁当を手にしていた。
5月とはいえ日差しが暑い。
元々肌が黒くて暑さに強そうに見える青峰は、実際のところ暑さを極端に厭う。
夏の屋外でのバスケはするくせに、太陽の日差しの下でじっとしているのが耐えられないのだそうだ。
桃井はそれを見ながら、どんなときだってじっとしてるのは苦手だろうに、と思うが、
小理屈をこねられて喜ぶ男ではないとよく知っている。
桃井自身もそんな青峰の矛盾をつつこうとは思わない。
気だるげな青峰は見慣れているし、むしろそんな青峰を見ていることが桃井の日常である。
「青峰くん、食堂で箸貰って来てよ」
「なんでオレが」
「じゃあジャンケン」
「ァあ…?」
「じゃーんけーん、ぽん」
ぽん、
と出された色の黒い手はグーで色の白い手はチョキ。
桃井の負けである。
「うっわ、めんどくさ…」
「人に面倒事を押し付けようとしてんじゃねぇよ」
「だって青峰くんのが足速いじゃないか。食堂1階だよ」
「早く行け」
「もー…。手掴みで食べたりとかしないで待っててよ」
た、と桃井は階段に消えた。
桃井の足音が聞こえなくなると、青峰は起き上がって桃井の鞄を開いて弁当を取り出した。
おかずの入ったタッパーとおにぎりが入ったタッパー。
おにぎりには赤や青や緑のシールが貼られている。
まよわず青のおにぎりを取って、食べた。肉味噌おにぎりである。
迷わず青いシールのおにぎりを2つ3つ食べた頃、桃井が帰ってきた。
「あ!先に食べてる!」
「おにぎりだからいいだろ。ラップかかってるし」
「だめだよ!ていうかお手拭入ってるんだから手くらい拭こうよ!ほら、」
桃井は鞄の中からお手拭を出して青峰に渡した。
青峰は何を言うでもなく手を拭く。
箸2膳。
タッパーを挟んで青峰の向かいに座って、桃井は手を合わせた。
「いただきます」
「ん、」
「青峰くん、いただきますは?」
「ます」
青峰はから揚げを、桃井はしょうゆの卵焼きから手をつけた。
黙々と食べる。
日陰に吹き込む、少し乾いた風が心地いい。
野菜も食べなきゃ駄目だよと言いかけて桃井はやめた。
まるで家に2人でいるときのようである。
そういえば家の外で2人で食事を摂るのは久しぶりだ、と桃井も青峰もそれぞれに思った。
いつも喧しい部活の連中の姿がない。
「みんな今日はお弁当ないから食堂行ったよ」
「いつもこれくらい静かならいいんだけどな」
「まあ…あっ肉味噌あと一個しかない!」
「残念だったな。家帰ってから食え」
ひょい、と青峰は青いシールのおにぎりを手に取った。
「あ、あー!最後のいっこ!」
「梅とたらこあるからいいだろ」
「梅とたらこも好きだけどさー…肉味噌…」
「さつき、お茶」
「うん」
恨み言を呟きながらお茶をカップに入れて青峰に渡した。
少し考えてから、桃井は緑のシールのおにぎりを取った。
(今日青峰くんは帰ったら何が食べたいって言うかな)
そんなことを思いながら、桃井自身は肉味噌に思いを馳せていた。