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くろばすの紫と氷。
正直あんま憶えてないのに書くのどうかなーと思ったけど
なにかが降りてきたのでかきました。
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【焼ける空と同じ色の愛情】
旅行に行こうと言い出したのはどちらだったか。
紫原も氷室も記憶していない。記憶していないが、
それは出会って間もない頃のことだったように思う。
初めてキスをしたのもそのときだ。
知らない街の誰もいない公園で、屋台で買ったまんじゅうを頬張っていた。
ブランコに揺られながら、紫原の膝の上には1つだけ残ったまんじゅう。
夕日がまぶしい。
「最後のいっこ、食べていい?」
「いいよ。美味しかった?」
氷室の質問には答えずに紫原はまんじゅうを頬張った。
さして大きくもないまんじゅうは紫原のふたくちでこの世から消える。
その僅かな間に、あんこと皮がぼろぼろ落ちて紫原の膝の上に落ちた。
気にした様子もなく紫原は膝の上から食べかすを払いのける。
そのしぐさを見て氷室は失笑した。
「ついてる」
「ん」
氷室は腕を伸ばして紫原の口元についたあんこを拭ってやった。
僅かに逡巡して氷室はそのカケラを口の中にいれる。
甘い。
遥か海の向こう、米国ではあまり口にしなかった類の甘さである。
自分の口の端の甘味を拭って食べた氷室を、今度は紫原がしげしげと眺めた。
「室ちんはおかあさんみたいだね」
「そう?」
「うん、俺のおかあさんはそんなことしないけど」
「じゃあお母さんじゃないんじゃないかな?」
「そうかな?」
「そうだよ」
じゃあ何かな、と紫原は呟いた。
紫原が何を言わんとしているか、それこそ氷室のほうが知りたいことである。
くすくすと笑って氷室は小首を傾げた。女の子のように。
「恋人みたい?」
紫原はすこし考えた。
氷室は、すこし間違えたかな、と思った。
しかし紫原は、
「うん、そんな感じ」
と答えた。
その答えに氷室は戸惑う。
先ほど紫原の口許についていたあんこは指で拭うより舐め取れば良かった、と思う。
氷室の左手が何の前触れもなく紫原の左腕に伸びて、手の甲が触れた。
紫原は動じず、払いのけもせず、氷室の目を高い位置からのぞきこんでいる。
氷室はその視線に怖気を感じつつ言葉を零した。
「キスしたいって気持ちとキスされたいって気持ちは同じなんだ。…知ってた?」
「知らない」
紫原は氷室の髪に指を差し込んだ。
手入れのされていない髪は毛先がやや痛んでいて、
しかし紫原の指を引き止めることはなかった。
さらりと髪を梳いて指が落ちる。
「敦が教えてよ」
「いいよ。目、閉じて」
「閉じたら分からないよ」
「そういうものなんだけど…まあいいか」
氷室は紫原に口付けた。目を開けたまま、
近すぎる距離で居た堪れないくらいに見つめあいながら。
しばらく唇を吸った後に離れると、今度は紫原から口づけてきた。
口付けと言うにはあまりにおこがましいかも知れない。
噛み付くように口付けて、無理やりに舌が入り込んでくる。
物覚えが良いのか、慣れているのか。
あるいは氷室が受け入れなれているのか。
目を閉じる気配のない紫原の高い位置にある肩にすがって、氷室は目を閉じた。