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今度こそ青桃
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ごんごん、と窓を叩く音
1階のリビング、庭に面したところ
カーテンを引いて窓を開けると
庭に青峰が立っていた
降り始めた雨に短い髪の毛を濡らして、
【大人になってそれを愛と呼べるか分からないのが恐ろしくて】
「雷。くるらしいぜ」
「しってる。さっきニュースでやってたから」
「あっそ」
勝手の知れた隣家の冷蔵庫から
ほぼ青峰専用と言える炭酸飲料を取り出し
青峰はコップも使わずにそのまま茶色の液体を流し込んだ
喉の奥で僅かに炭酸が弾ける
「今日おばさんたちは?」
「仕事で遅くなるって」
「メシは?」
「レンジでチンするのと、あとご飯とお味噌汁暖めればあるよ」
「あっそ」
青峰がテレビの前のソファにどっかりと座ると
桃井は何も言わずにその隣、青峰から65センチほど離れた場所に腰掛けた
テレビをつける
適当にチャンネルを変えて
適当なところで、なんもやってねえ、と青峰は呟いた
「9時からドラマ見たい」
「今まだ7時半だぞ」
「9時からのドラマ見たいから、テレビ権予約なの」
「ほかに面白そうなのなかったらな」
「えー!」
そのとき。
ごろごろごろごろ…
がしゃん!!
雷が落っこちた
ざあざあと雨音が大きくなっていく
少しずつ
音の波が波紋を
テレビの音は掻き消されず、しかし意識の外にはじかれて
桃井の耳に届かなくなった
この世界の音は雨音と雷と2人分の声と呼吸
「…落ちたね」
「驚いたか?」
「べ、つに!」
「っは」
軽く、薄く、笑って青峰は桃井の手の甲に掌を重ねた
「いつまでたってもガキのまんまだな」
「…仕方ないでしょ、苦手だから」
「泣かなくなっただけ進歩ってか」
「昔からそんなに泣いてないわよ!」
がしゃん!
空気が裂かれて悲鳴があがる
雷
雨はやみそうにない
「…いつまでもコドモじゃないわよ」
「まだ怖いんだろ。ガキじゃねぇか」
「もう!」
青峰は手に力は込めない
桃井から指を絡めることもない
子供のころは素直に泣いて、泣きついて
手を強く握ってもらっていた、それは既に過去
やがていつか大人になって怖いものがなくなったときに
この手と掌はどこへ行くのか
「…いつかオトナのオンナになるんだから」
「…いつだよ」
この手と掌の間にある温度に名前がつく日が、いつか